受けた治療はあなたにとって最善でしたか?

今日は、少しだけ固い話ですが、鍼灸師にとっても患者さんにとっても大切な問題について書きます。
先日、私のFacebookでも書き込みましたが、
国家試験を終えた息子に、
「鍼灸はRCT(科学的検証方法の一つ)で効果を示さなければ受け入れることができない。」
言われました。
それに対し、彼の教官にである浜松医科大学の小林教授から、
「医療にはナラティブな物もある。」
とコメントで擁護していただきました。
その後もそのことを考えていました。
鍼灸師とEBMとNBMについて話をします。
①EBMと鍼灸
鍼灸師は、鍼灸治療に対しての効果を訴える時に、エビデンス(根拠や証拠)が低いと評価されることがあります。
エビデンスに基づいた医療。いわゆるEBM(evidence-based medicine)です。
最近は、鍼灸業界ではやたらともてはやされるワードの一つです。
業界内外からEBMでなければ、認められない。とまで言われることもあります。
これに対して、鍼灸師も客観的なデータを出そうという動きも見られます。
これは私達鍼灸師にとって重要な活動でもあります。
しかし多くのデータを集めるのには治療条件を一定する必要があり、
実に多くの流儀のある鍼灸の世界では困難を伴うことも少なくありません。
まだまだこれから多くの課題を克服していかなければなりません。
②NBMと鍼灸
高度化した医療の中では、EBMが重要視されるがために、
患者さんの意思が軽んじられる事実がでてきました。
例えば、
A医師「あなたの病気には、手術が最も効果的とデータが出ています。だから手術しましょう。」
患者「でも手術は怖いし、何日も入院したら子供たちの面倒も見る人がいないし・・・。」
A医師「科学的データで、手術が最適とされているので、任せてください。」
患者「・・・・・。」
結局この患者さんは、A医師の所に来なくなって転医してしまいました。
患者さんは、A医師に診てもらう理由の背景に色々な状況を抱えています。
それをも含めて最善の方法を選択していく手段が見直されてきました。
それが物語(ナラティブ)に基づいた医療と言われる、
NBM(Narrative-based Medicine)です。
NBMでは、患者さんに医療者が一方的に方針を押し付けるのではなく、
じっくりと患者さんの要望やそれに至る状況を確認する作業を伴います。
一対一でじっくり治療を行う鍼灸治療は、ナラティブな医療の色が濃いとされます。
鍼灸治療には、患者さん本位の全人的アプローチができる良い面があります。
しかし一方では、科学性(EBM)に欠けると批判される現実があります。
「受けている治療法は、最善なのだろうか?」
「もっと他に最善の治療法があるのではないか?」
この様な疑問が付きまとう事になります。
今後の人生に係る不妊治療や病気や問題ならばなおさらです。
だから、鍼灸師はエビデンス(EBM)を課題としながらも、
ナラティブ(NBM)な活動をすることが求められています。
結局のところ、私はEBMを持った医療者がNBMを臨床で実行することが最善だと考えています。
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