黄体機能不全に関するある考え方

黄体機能不全に対する興味深い考え方をする生殖医療専門クリニックを見つけました。
一般不妊治療では、タイミング法や人工授精などの段階で、血液検査によってホルモン値の測定を行うことがあります。
日本産婦人科学会の基準では、黄体期のプロゲステロン(P4)を測定して、10ng/ml以下だと黄体機能不全を疑います。
その治療のために、黄体ホルモン製剤(デュファストン、ルトラールなど)やHCG注射などが使われます。
このクリニックの医師はこの治療に反対の立場をとっています。
理由は薬によって基礎体温を上げたらと言って妊娠につながるわけではないというものです。
”良質の黄体は、良質の排卵に付随する”ということを強調しています。
良質な排卵のために、クロミッド、フェマーラなどでの排卵誘発剤で卵胞を成熟させて、
GnRHアゴニストによる排卵促進を行うという方針をとっています。
問題点①
”良質の黄体は、良質の排卵に付随する”。この考え方には賛同します。
しかし排卵誘発剤はサイズの成熟には効果がありますが、必ずしもサイズ=卵胞の質ではありません。
排卵誘発剤を使用するのは、排卵の前1か月以内です。
卵胞の成長は排卵の半年も前から始まっています。この期間に対する介入は薬では行われません。
私は、良質な排卵=良質な卵胞の排卵であることが重要だと考えます。
排卵促進剤の使用=良質の排卵という結び付けは少し短絡的ではないかと考えます。
日本生殖鍼灸標準化機関JISRAMにおいては排卵の半年前からの介入が功を奏しているという(育卵)立場です。
問題点②
日本の不妊治療にはガイドラインというものが存在していません。
英国、仏国、独国では法整備が進んでいます。米国ではアメリカ生殖補助医療学会等からガイドラインが出ています。
日本では各医療機関の方針が違うために、不妊治療を受ける患者さんは振り回される可能性があります。
ガイドラインの作成や法整備が待たれます。
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