勝ち組、負け組という言葉から

不妊鍼灸治療の患者さんとの会話の中に、「勝ち組、負け組」という言葉がときどき登場します。
妊娠を希望して妊活中の方からみると、妊娠出産した方を「勝ち組」と表現されます。
一方なかなか妊娠できないで不妊治療が長引いている自分を「負け組」と表現します。
けっして負けてしまった訳ではないけど、出産した方との関係を相対的に表現したものだと
解釈しています。
「いつかは自分も不妊治療によって妊娠できれば勝ち組に・・・。」
そんな気持ちも一方で持っていらっしゃいます。
価値の多様化する現代において、「勝ち組、負け組」という問題を論じる時、
非常に多くの意見があるでしょうし、水掛け論になってしまうでしょうね。
私もここで論じることはできません。
今回お話ししたいのは、
不妊治療中の複雑な気持ちを持った患者さんをどの様にお迎えすべきか。
市内の不妊専門クリニックの待合室の様子を聞くと、
待合室が人でいっぱいでも
「全体にシラ~として、独特の雰囲気がある。」みなさんおっしゃいます。
あまり良い雰囲気ではない様子です。
患者さん同士のコミュニケーションもほぼ無いそうです。
そんな話を聞いている時、私はいつも浪人生だった時の大学試験の孤独な試験会場を思い出してしまいます。
そこに集まる受験生のゴールは決まっています。
ただし大学受験は合格定員がありますが、妊活中の方はみなさんにゴールインする権利があります。
それでも、同じ境遇にあるかもしれない周囲の患者さん同士、なかなか話し掛けることがありません。
お互いにつらさが解る故に、そっと触れない気遣い。
自分だけ置いて行かれたくない気持ち。
いろいろな感情の混じった複雑な気持ちがあるのだと感じます。
妊活中の方を引き受けている私を含めた医療側は、
そんな気持ちを十分に踏まえてお迎えする必要があります。
少しでも不妊患者さんにとって良い環境でありたい。
今後とも患者さんから意見を聴きながら、
不妊鍼灸の場に相応しいSSKCを目指したと思います。
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