早発卵巣不全や卵巣機能低下は、不妊治療の大きなリスクです。

(図は、卵の発育と成熟 卵母細胞の発育制御機構
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY Vol.18 No.4, 13-18, 2011より)
不妊治療の臨床では、卵巣予備能の指標とされる、
AMH(アンチミュラーホルモン)が、極端に低くなり、
薬剤による卵巣刺激を行っても反応せず、採卵が困難になる方がいます。
早発卵巣不全(POI)・卵巣機能低下(DOR)・早期閉経などと診断されます。
40歳を超えると、AMHがかなり低くなり採卵数が少なることは当然よくあることですが、
40歳未満でも同様の所見が見られることがあります。
不妊治療にとって極めて厳しい状況です。
これらの症状の原因はまだ不明とされていますが、
熊本大学発生医学研究所のグループが、発生原因となりそうなメカニズムを発表しました。
患者さんの胎児期のある限られた時期に卵子の元となる卵母細胞(一次卵母細胞)が出来上がります。
論文では、この限られた時期にある特殊なタンパク質が働かないと、
卵子の成長の過程である、減数分裂が開始されなかったり、開始の遅延が起こることを発見しました。
それにより、卵巣の中で一次卵母細胞に成長を開始できなかった卵子は排除されて、
結果として予備軍(卵母細胞プール)の数が少なくなってしまうことになります。
スタート時点で、卵子予備能が不利な状況なのです。
ここから言えることは、
①胎児期に特殊なタンパク質の働きに影響する薬などの使用についての検討が示唆されていること。
②不妊治療を開始時点でAMHが低ければ、POIやDORを疑うことも必要かも。
論文名:STRA8–RB interaction is equired for timely entry of meiosis in mouse female germ cells
著者:Ryuki Shimada, Yuzuru Kato, Naoki Takeda, Sayoko Fujimura, Kei-ichiro Yasunaga, Shingo Usuki, Hitoshi Niwa, Kimi Araki, and Kei-ichiro Ishiguro
掲載誌:Nature Communications
DOI:10.1038/s41467-023-42259-6
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